あまとみトレイル解説|新潟・長野をつなぐ山旅

新潟の妙高から長野・戸隠を結ぶ静かな縦走路「あまとみトレイル」。派手な観光地とは一線を画す、中級者向けの本格ロングトレイルです。ルートの魅力・モデルコース・注意点を徹底解説!

更新:2025.6.5 作成:2025.6.5
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目次
  1. あまとみトレイルとは?|静けさと信仰が交差する道
  2. モデルコース紹介|1泊2日で歩くならここ!
  3. アクセス・シーズン・装備のポイント
  4. 注意点と心得|このトレイルは「初心者向け」ではない

あまとみトレイルとは?|静けさと信仰が交差する道

総延長86kmのロングトレイルが2021年に一部開通

あまとみトレイルは、長野駅から戸隠、妙高・笹ヶ峰、野尻湖を経て斑尾山頂へと至る、総延長86kmのロングトレイルです。2021年10月23日に一部区間が開通し、現在も整備が段階的に進められている“発展中”のトレイルルートとなっています。斑尾山頂では「信越トレイル」と接続しており、両トレイルを組み合わせれば、200km近いスルーハイクも視野に入るスケール感です。

名称の「あまとみ」は、西の雨飾山(あ)、東の斑尾山(ま)、南の戸隠山(と)、北の妙高山(み)という、この地域を象徴する四つの山から頭文字を取って名付けられました。単なる地理的な移動手段としてのトレイルではなく、信仰・自然・文化を感じながら歩く「道」として設計されたルートであり、地元住民や行政・有志の登山者たちが丁寧に踏査し、議論を重ねながら決めてきた経緯があります。

信仰と自然が交差する、静かな“裏ロングトレイル”

このトレイルの魅力は、知名度の高い観光登山道とは異なり、まだ大規模な商業化が進んでいない“静かな山道”であることです。戸隠神社や妙高山、飯縄山といった信仰の対象としての山々をつなぎながらも、人の往来は少なく、自然と向き合える時間が保たれています。地元の修験道や古道文化が息づくエリアでもあり、トレイルを歩くことで“祈りの道”を辿るような深い体験が得られるでしょう。

なお、現時点では全線が完全に整備されているわけではなく、区間によっては道標や案内が少ない場所もあります。だからこそ、地図読みや事前の情報収集が欠かせず、自己完結型の登山を好む中級者以上におすすめのルートと言えるでしょう。完成しきっていない今だからこそ味わえる、“静寂と発見に満ちた山旅”が、このあまとみトレイルにはあります。

モデルコース紹介|1泊2日で歩くならここ!

アクセスしやすい「戸隠〜黒姫〜野尻湖」ルート

あまとみトレイルは全長約86kmの長大なルートですが、すべてを一度に踏破する必要はありません。はじめて歩く人には、戸隠から黒姫山麓を経て野尻湖方面へと抜ける1泊2日の区間歩きがおすすめです。戸隠神社奥社を起点とし、戸隠牧場〜黒姫山西登山口〜氷沢避難小屋を経由し、苗名滝を通って野尻湖方面へ。全体でおよそ30km、自然・文化・展望がバランスよく楽しめるルートです。

1日目は戸隠の神社群や牧場周辺を歩き、夕方には氷沢避難小屋またはその近くで宿泊。2日目は妙高山麓を巻くように歩いて野尻湖へ向かいます。比較的アップダウンも少なく、風景や文化の変化に富んだ行程で、あまとみトレイルの魅力を凝縮したような区間です。

タイプ別・歩き方のヒント

  • まずは雰囲気を味わいたい人には
     長野駅〜善光寺〜飯綱高原〜戸隠神社中社を結ぶ「戸隠古道」区間(約12km)

  • 展望と自然を満喫したい人には
     戸隠〜飯縄山〜黒姫〜野尻湖(約30km/1泊2日)

  • 本格スルーハイクを目指す人には
     長野駅〜斑尾山までの全ルート(3〜4泊/86km)がおすすめ

いずれのプランでも、「地図読み+GPSナビ」が必須です。

歩く前に揃えたい3つの準備

1. GPXデータ(登山用ナビ)をスマホに入れておく
 → スマートフォンのGPS機能で現在地がわかるルートファイル。無料で公式サイトから入手できます。

2. MAP BOOK(公式マップブック)を持っておく
 → ルートの地形図・水場・目印がまとまった地図冊子。紙のバックアップとして非常に心強い存在です。

3. 歩く区間の最新情報を調べておく
 → 吊り橋の通行止めや冬期閉鎖など、区間によって状況が異なります。公式ページで事前確認を。

あまとみトレイルは、まだ発展途上のトレイルです。だからこそ、整備され尽くしていない“本物の山歩き”の感覚が残っています。準備さえ整えれば、静けさと発見に満ちた冒険の時間が待っています。

アクセス・シーズン・装備のポイント

登山口へのアクセス|公共交通とマイカーの使い分けを

あまとみトレイルの主な起点は「長野駅」と「斑尾山頂」の2つ。長野駅は新幹線や高速バスが乗り入れる好アクセス拠点で、飯綱高原・戸隠方面へは路線バスが出ています。黒姫駅や妙高高原駅から野尻湖・笹ヶ峰方面へは、季節運行バスやタクシーが利用可能です。

ただし、トレイル全体を縦走する場合は「車の回収」問題があるため、公共交通×宿泊の組み合わせが現実的。日帰り区間歩きであれば、マイカーで登山口まで行き、ピストンか周回する形でも対応できます。

ベストシーズンは?|春〜秋、それぞれの魅力

歩ける期間は雪解け後の5月中旬〜11月上旬までが目安。特におすすめは、6〜7月の新緑と、9〜10月の紅葉シーズンです。夏は標高が高いため比較的涼しく、虫も少なめ。秋はカラマツやブナの黄葉が美しく、特に黒姫山〜氷沢橋〜笹ヶ峰エリアは撮影スポットとしても知られています。

ただし10月後半以降は朝晩の冷え込みに注意が必要で、早ければ11月上旬に雪が降ることも。天気予報と積雪情報は必ず確認しましょう。

必携装備|山歩きと縦走の両面を意識して

あまとみトレイルは、散策路ではなく登山道や未整備道を含む本格的なロングトレイルです。舗装路と山道が交互に現れるため、以下のような装備が求められます。

  • 登山靴(ローカット不可):滑りやすい山道や濡れた草地にも対応

  • GPS対応スマホ+モバイルバッテリー:ルート確認用に必須

  • MAP BOOK(地図冊子):電池切れ対策に紙地図も携行

  • クマ鈴・ヘッドライト・レインウェア:自然環境での基本装備

  • 食料・水・浄水器やタブレット:エスケープできない区間もあるため

また、通行止め情報や最新の気象情報をチェックする習慣も大切です。公式サイトやSNS(Facebook)で随時更新されているので、出発前に確認しておきましょう。

注意点と心得|このトレイルは「初心者向け」ではない

あまとみトレイルは“観光トレイル”ではない

あまとみトレイルは、整備された遊歩道や観光地のハイキングコースとは異なります。区間によっては道標が未設置だったり、踏み跡が不明瞭な場所もあり、地図読みやルートファインディング能力が求められます。標高差も大きく、アップダウンの連続する山道を1日20km以上歩くこともあるため、最低限の登山経験と体力が必要なコースです。

「整備された長距離散歩道」ではなく、“縦走トレイル”として歩くべき山道であることを理解し、気軽に挑むべきではありません。

安全管理はすべて自己責任で

あまとみトレイルには、山小屋やエスケープルートが限られている区間があります。特に黒姫〜妙高・笹ヶ峰方面の山域は人通りも少なく、トラブル時に自力で下山できる判断力と準備が重要になります。携帯圏外になることもあるため、ヘッドライトや食料、バッテリーなどの“もしも”に備える装備は欠かせません。

また、吊り橋の損傷や崩落による通行止めなど、最新のルート状況を常に把握しておくことも大前提。情報収集を怠ると、想定外の迂回や撤退を余儀なくされることもあります。

地元と自然への配慮を忘れずに

トレイルは地元の人々の暮らしの場を通過するため、迷惑駐車や私有地への侵入、ゴミの放置などは厳禁です。歩かせてもらっている意識を持ち、静かに、丁寧に自然と人々の暮らしに向き合うことが、あまとみトレイルを歩く上での大切なマナーです。

また、地域にはツキノワグマも生息しており、クマ鈴やクマスプレーの携行も推奨されます。「自然の中に人間が入っていく」感覚を忘れずに、安全第一で臨みましょう。

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