更新:2025.4.25 作成:2025.4.25

ゴールデンウィーク限定開通!残雪の尾瀬を満喫しよう

日本有数の山岳湿原「尾瀬(おぜ)」は、例年4月末~5月初旬のゴールデンウィーク(GW)期間のみ一時的に開山します​。雪深い冬季は長らく閉ざされ、GWの限られた時期だけ道路や登山道の通行止めが解除されるのです。その後、5月7日から6月末までは環境保護のため再び入山禁止となり、本格的なシーズンは夏までお預けになります​。そんな “GW限定開通” の尾瀬には、雪が残るこの時期ならではの特別な魅力が詰まっています。一度夏に訪れたことがある人も、春の雪景色に包まれた尾瀬を体験してみませんか?この記事では、GWにしか楽しめない残雪期の尾瀬の魅力と注意点、開通するルートやアクセス情報、宿泊・設備状況、さらに写真スポットや楽しみ方のコツをご紹介します。
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目次
  1. 尾瀬はなぜGW期間のみ開通するのか?
  2. 雪が残る尾瀬の魅力 – 春と冬が出会う絶景
  3. GW限定で開通するルートとアクセス方法
  4. GW期間中の宿泊情報と設備状況
  5. 写真スポット&おすすめの楽しみ方

尾瀬はなぜGW期間のみ開通するのか?

尾瀬がGW限定で開通する背景には、厳しい自然環境と環境保全の取り組みがあります。尾瀬一帯は日本屈指の豪雪地帯であり、冬から春先にかけて厚い雪に閉ざされます。登山口への道路も冬季閉鎖となるため、一般の人が尾瀬ヶ原や山域に立ち入れるのは雪解けが始まるGW頃が最初となるのです​。GW前後になると主要な登山口(群馬県側の鳩待峠など)の冬季通行止めが解除され、尾瀬のシーズンが幕を開けます​。
 

しかし、雪が融けきる梅雨入り前の初夏は、尾瀬の繊細な高山植物にとって大変デリケートな時期です。特に至仏山(しぶつさん)では、雪解け直後の登山道はぬかるみやすく植物が踏み荒らされてしまうため、毎年GW期間以外は登山禁止措置が取られています​。実際、至仏山の残雪期利用は4月中旬~5月初旬のごくわずかな期間だけに限定され、期間終了後は7月の山開き直前まで登山道が閉鎖されます​。このように、尾瀬がGWのみ“特別オープン”するのは、残雪がある時期ならではの安全性と環境保全上の理由からなのです。

雪が残る尾瀬の魅力 – 春と冬が出会う絶景

残雪期の尾瀬は、夏や秋の尾瀬とは一味違う幻想的な絶景と静けさに満ちています。真っ白な雪原と真っ青な空のコントラストの中、自分の足跡を雪に刻みながら歩く体験は爽快そのもの​。森を抜けて視界が開けると、一面の銀世界と周囲の雪山が目に飛び込んできます。頭上の青空、足元のサクサクと雪を踏む音…五感で味わう雪山ハイクの醍醐味を、春の尾瀬で存分に味わえるのです​。晴天に恵まれれば、遠く燧ヶ岳(ひうちがたけ)や至仏山を眺めつつ真っ白な尾瀬ヶ原を進む贅沢も味わえます​。普段は木道から外れて踏み入れられない湿原も、雪に覆われたこの時期なら自由に歩ける特別感があります(もちろん立ち入り禁止区域は厳守)。まさに春と冬が出会う尾瀬であり、限られた期間だけのご褒美と言えるでしょう。

さらに、雪原のあちこちで春の兆しも感じられます。雪解け水が流れる湿地の縁では、ミズバショウ(水芭蕉)が可憐な白い花を咲かせ始めます。​GW時点ではまだ「ちらほら」といった咲き始めですが、真っ白な雪との共演はこの時期だけの光景です。冬の名残と春の訪れを同時に写真に収められる贅沢な瞬間で、カメラ好きにはたまりません。また、夏のピーク時に比べると訪れる人も限定されるため(それでもGW中は登山客で賑わいますが)、タイミングやルート次第では静かな尾瀬を独り占めできるかもしれません。雪原に響く鳥のさえずりや風の音に耳を澄ませば、心まで洗われるような感動を味わえるでしょう。

残雪期の尾瀬を楽しむポイント

安全第一の装備で – まだまだ雪山です。軽アイゼン(6本爪程度の簡易アイゼン)や滑りにくい登山靴を用意しましょう。実際、筆者を含め多くの登山者が鳩待峠で軽アイゼンを装着して雪道に備えています​。防水性の高い登山靴やゲイター(スパッツ)も雪融けで足元が濡れるのを防ぐために有効です。日差しが強く雪面の照り返しもあるので、サングラスや日焼け止めもお忘れなく。朝夕は氷点下近く冷え込みますが日中は汗ばむほど暖かくなることもあるため、重ね着できる服装で体温調節がしやすい工夫をしましょう。

時間とルートに余裕を – 雪上歩行は思った以上に体力を消耗します。雪が緩みやすい午後遅くになる前に下山できるよう、早めの行動開始を心がけてください。GW時期の日の入りはまだ早めですし、気温が下がると雪面が凍って危険です。無理のない計画を立て、14~15時には下山開始できると安心です。また、ルート上には目印のポールが立てられているので、見落とさないよう注意しましょう​。広い雪原では自分の位置を見失いやすいため、地図やGPSを活用しつつ、単独行より経験者と同行するのがベターです。

バックカントリーも魅力! – 雪山に慣れた上級者であれば、尾瀬の残雪期はバックカントリースキーやスノーボードの絶好のフィールドでもあります。実際、GWの至仏山山頂付近では大きなザックを背負ったスキーヤーたちが滑走を楽しむ姿も見られます​。ただし、バックカントリーには高度な経験と判断が求められるので、ガイドツアーを利用するか熟練者と一緒に行動してください​。山スキーに挑戦しなくとも、滑る人たちを眺めるのも残雪期ならではの光景で面白いですよ。

GW限定で開通するルートとアクセス方法

ゴールデンウィーク期間中に通行可能な主なルートは、群馬県側の鳩待峠(はとまちとうげ)を起点とするコースです。鳩待峠は尾瀬ヶ原への玄関口で、標高約1,600mまで車道でアクセスできます。ここから尾瀬ヶ原方面へ下るルートと、至仏山へ登るルートの分岐点となっており、残雪期には至仏山の周回コースを楽しむことができます。

●至仏山・残雪期限定周回コース

尾瀬を代表する名峰・至仏山(標高2228m)へは、GW期間だけ解放される周回ルートで登頂できます。鳩待峠をスタートし、まず小至仏山を経由して至仏山の山頂を目指します。山頂で雪景色の絶景を堪能したら、今度は反対側の山ノ鼻(やまのはな)方面へ下山します。その後、尾瀬ヶ原の西端に位置する山ノ鼻から緩やかな登り坂を辿って鳩待峠へ戻るルートです​。全行程は約4時間半ほどで周回でき、初心者でも日帰り可能な行程になっています。

このコース最大の特徴は、夏季には通行規制されている区間を逆方向に下れることです。通常、夏の至仏山では山ノ鼻からの登りルートは登り専用(下山禁止)になっています。急斜面の脆い砂礫地で登山道保護のため下山が禁止されているのですが、残雪期は厚い雪がその斜面を覆い踏み固めてくれるため、安全に下ることができるのです。雪のおかげで勾配も緩和され、ガレ場が苦手な方でも歩きやすくなっています。この時期だけ「夏とは逆向き」に至仏山を一周できるのは大きな魅力でしょう。

もし「山頂までは自信がない…」という場合は、鳩待峠から山ノ鼻まで往復するだけでも構いません。往路は標高差約300mを緩やかに下る1時間ほどの道のりで、ブナ林を抜けると雪原が広がる山ノ鼻に到着します。山ノ鼻から先の尾瀬ヶ原も開放はされていますが、広大な雪原を踏み抜きに注意しながら進むのは難易度が高めです。無理せず山ノ鼻周辺で雪の尾瀬ヶ原風景を眺めたり、水芭蕉を探したりして引き返すだけでも十分楽しめるでしょう。体力や天候に合わせてプランを調整してください。

●アクセス方法

鳩待峠までのアクセスは、マイカー規制など最新情報に注意が必要です。2024年シーズン以降、群馬県側の戸倉(とくら)~鳩待峠間の道路は通年でマイカー・オートバイの乗り入れが禁止されています。そのため、車の場合は手前の戸倉地区にある「尾瀬第一駐車場」または「尾瀬第二駐車場」(いずれも有料)に駐車し、シャトルバスまたは乗合タクシー(乗合タクシーは相乗りタクシー)に乗り換える形になります。戸倉から鳩待峠までは約3.5km、所要25分ほどで、料金は片道1,300円前後です。GW期間中は早朝から臨時便が運行されることもあるので、余裕をもって行動しましょう。

公共交通機関を利用する場合、最寄りの鉄道駅はJR上越線の沼田駅です。沼田駅から尾瀬戸倉までは関越交通バス(季節運行)で約1時間30分。そこから先は上記のシャトルバスか乗合タクシーに乗り換えて鳩待峠へ向かいます。なお、尾瀬戸倉へ直通バスは本数が限られるため、事前に時刻表を確認してください。

福島県側(尾瀬沼方面)のルートについては、GW期間中はまだ雪深く、本格的な開通はもう少し後になります。檜枝岐村(ひのえまたむら)の御池(おいけ)~沼山峠に至る道路も通年で一般車両通行禁止で、シャトルバスの運行開始は例年6月下旬からです​。したがって、GW中に尾瀬沼側からアクセスするのは現実的ではありません。やはり鳩待峠を起点とする群馬県側ルートが圧倒的に便利でおすすめです。なお、新潟県側からのルートもありますが、こちらも残雪期は踏破困難なので、本記事では割愛します。

GW期間中の宿泊情報と設備状況

ゴールデンウィークの尾瀬は、まだ本格的な山小屋シーズン前ということもあり宿泊施設や設備の稼働が限定的です。夏には尾瀬ヶ原や尾瀬沼周辺に多数の山小屋・休憩所が営業しますが、GW期間中は多くが営業前の準備期間となっています。例えば、尾瀬ヶ原西端の山ノ鼻ビジターセンター(山ノ鼻休憩所)は例年5月中旬(2024年は5/14)になってようやく開所する状況です​。したがって、GW中は原則として日帰りを前提に計画したほうが良いでしょう。
 

山小屋についても、基本的にGW期間は営業休止中と考えてください。山ノ鼻や見晴(尾瀬ヶ原東端)、尾瀬沼周辺などにある主要な山小屋は、多くが6月頃から営業開始です。ただし、山ノ鼻の「山ノ鼻小屋」など一部ではGW期間中に昼間のみ休憩営業や軽食の提供を行っている場合があります​。実際に2023年のGWでは、山ノ鼻の小屋が10時~14時限定で営業し、登山者が暖かい飲み物などを買えるようにしていました​。こうした情報は年によって変わるため、尾瀬保護財団や山小屋の公式サイトで直前に確認することをおすすめします。
 

宿泊する場合の選択肢としては、尾瀬エリア外の温泉宿や民宿に泊まり、朝早く入山する方法があります。鳩待峠や戸倉の周辺(片品村)には温泉旅館やペンションが点在し、檜枝岐村側にも尾瀬御池ロッジなど宿泊施設があります。前夜に近隣に泊まっておけば早朝から行動でき、安全面でも安心です。また、雪上テント泊の経験がある上級者であれば、指定地でのテント泊も不可能ではありません。尾瀬には山ノ鼻や見晴などキャンプ指定地がありますが、GW時は深い雪の上でのテント設営となります。防寒装備や十分な経験が必要なうえ、ルールやマナー(テント指定地以外での宿泊禁止、直火禁止など)も厳守してください。
 

トイレ事情も事前に把握しておきましょう。尾瀬は環境保全のため携帯トイレの利用が推奨されていますが、主要な拠点にはバイオトイレが整備されています。GW期間中に利用可能な公衆トイレは、鳩待峠の休憩所および山ノ鼻の公共トイレです。鳩待峠休憩所には清潔な水洗トイレがあり、出発前にここで済ませておくと安心です。山ノ鼻のトイレもGWに合わせて開放されます。一方、尾瀬ヶ原中央部(見晴や竜宮など)や尾瀬沼周辺のトイレはこの時期まだ閉鎖中なので、行動範囲に注意が必要です。念のため携帯トイレを持参し、万一の場合は所定のルールに従って使用してください。ゴミ箱はありませんので、使用済みの携帯トイレやゴミは必ず持ち帰りましょう。

写真スポット&おすすめの楽しみ方

残雪の尾瀬には、写真好き・自然好きにとって見逃せないスポットが数多くあります。ここではGWの尾瀬ならではの撮影ポイントや楽しみ方をいくつかご紹介します。
 

  • 至仏山山頂の360度パノラマ:晴れていれば至仏山の山頂から尾瀬国立公園の全景を見渡せます。北に燧ヶ岳、眼下に広がる尾瀬ヶ原、その先に至る山並みまで、思わず息を呑む大展望です。雪化粧した山々と青空のコントラストは写真映え抜群で、山頂標識と一緒に記念写真を撮る登山者もたくさんいます。風が強い日もあるので、防寒対策だけお忘れなく。
     

  • 山ノ鼻周辺の雪解け風景:山ノ鼻は尾瀬ヶ原の入口にあたり、春の変化を間近で感じられる場所です。木道と雪原の境界付近では雪解け水が小川となり、その周りで顔を出すミズバショウの群生が見られます。白い苞(花びらに見える部分)と黄色い花芯が雪の白に映える様子は、この時期ならではの被写体です。しゃがんでローアングルから撮影すれば、背景に至仏山を入れたダイナミックな写真も狙えます。
     

  • 尾瀬ヶ原の大パノラマ:雪に覆われた尾瀬ヶ原そのものも絶景スポットです。山ノ鼻から少し湿原に踏み出すと、視界いっぱいに広がる真っ白な平原と、その向こうに聳える燧ヶ岳や至仏山を一望できます。まるで雪原の中にポツンと立っているような不思議な感覚で、思わず写真に収めたくなるでしょう。人の足跡が点々と続く様子も画になります。残雪の量によっては所々に草地や湿原の池塘(ちとう:雪解け水が溜まった池)が現れ、青空を映す鏡のようになります。そこに映り込む逆さ燧ヶ岳などは、隠れた撮影チャンスです。
     

  • 星空とご来光(上級者向け):もし雪上キャンプに挑戦できる熟練者であれば、夜の尾瀬も格別です。空気が澄んだ残雪期の夜空には満天の星が瞬き、運が良ければ天の川さえ見ることができます。山小屋の灯りが少ない分、星明かりに照らされた白銀の湿原は神秘的な雰囲気です。また、早朝のご来光も見逃せません。至仏山や燧ヶ岳の稜線から昇る朝日は、雪原を淡いオレンジ色に染め上げ、とても幻想的な風景を作り出します。防寒を万全にして、自然が織りなすショーをじっくり堪能してください。

ゴールデンウィークの尾瀬は、冬から春へのバトンが手渡される一瞬を目撃できる貴重な機会です。夏の爽やかな尾瀬しか知らなかった人も、ぜひこのGW限定の特別な尾瀬に足を踏み入れてみてください。真っ白な雪と可憐な花が出迎える絶景、静寂と躍動が同居する空間は、きっと忘れられない思い出になるはずです。残雪期のトレッキングは十分な準備と注意が必要ですが、その先に待つ感動は計り知れません。さあ、春雪の尾瀬へ出かけてみませんか?

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