
更新:2026.10.26 作成:2026.10.26
鎌倉の古道歩きでいちばん面白いのは、山を削って通した「切通し」です。両側に迫る岩肌と、何百年も人が踏んできた細い道。寺社めぐりの延長で歩けて、半日あれば1コースを無理なく回れるのが鎌倉のいいところ。汗をかきすぎずに歩ける秋から冬は、ちょうどいい季節ですよ!
ただし、切通しはどれでも歩けるわけではありません。通り抜けできないもの、崩落の危険で通行止めになっているものもあります。この記事では、いま歩ける切通しを通る半日コースを3つ選び、起点と終点、距離と時間の目安、雨のあとの足元と通行止めの確かめ方までまとめました。
鎌倉市観光協会の説明によると、三方を山に囲まれた鎌倉は守りやすい反面、人や物の行き来には不便な土地でした。そこで山の稜線を切り開いて通した道が切通しです。交通の出入口であり、守りの要でもあった道だと知ってから歩くと、同じ景色でも見え方が変わります。
切通しのまわりには、山の斜面を垂直に削り取った人工の崖「切岸(きりぎし)」や、山頂や山腹に造られた平らな場所「平場(ひらば)」が残っています。どちらも防衛の拠点だったと考えられているもの。道幅が馬1頭がやっと通れるほど狭い所もあります。
主な切通しは「鎌倉七口(鎌倉七切通)」と呼ばれ、名越(なごえ)、朝夷奈、巨福呂坂(こぶくろざか)、亀ヶ谷坂(かめがやつざか)、仮粧坂(けわいざか)、大仏、極楽寺の7つ。歩きながら、どこが削られた崖で、どこが人の手で平らにされた場所なのかを探してみてください。ただの山道が、急に「造られた道」に見えてきます。
七口のすべてを通して歩けるわけではありません。観光協会によると巨福呂坂は現在は通り抜けできず、鎌倉市は大仏切通について、いまは全行程を歩くことはできないと案内しています。一方で亀ヶ谷坂は今も生活道路として使われていて、北鎌倉駅から歩いて10分ほどで立ち寄れます。
七口に数えられない「釈迦堂切通」は、崩落の危険があるため現在は通行できず、トンネルに近づくこともできません。市の案内では、通行再開は令和8年度(2026年度)末の予定です。歩けるかどうかは名前の知名度ではなく、その時点の公式の案内で判断する。この記事の3コースは、10月下旬の時点で鎌倉市・逗子市・横浜市金沢区の案内に通行止めのお知らせが出ていないことを確かめて選びました。
選んだのは、自治体や観光協会がコースや見学先として案内していて、駅かバス停から歩き始め、別の駅かバス停で終われる3本です。どれも歩く時間は2時間以内が目安。並び順は、初めての人に向く順にしています。
鎌倉市観光協会が初心者向けとして案内する定番コースです。JR北鎌倉駅から浄智寺の脇道に入り、葛原岡神社、源氏山公園を通って鎌倉大仏(高徳院)へ下り、江ノ電の長谷駅へ。全長約3km、所要時間は約1時間30分。観光協会の別の記事では、参拝を含めて2時間〜2時間30分ほどとされています。
切通しは、源氏山公園のすぐわきにある仮粧坂。七口のひとつで国指定史跡、1333年に新田義貞が鎌倉を攻めたときに激戦地となった坂です。観光協会は足元が悪く滑りやすい所もあると注意しています。鎌倉駅からは歩いて約20分なので、鎌倉駅から仮粧坂を上って源氏山公園でコースに合流する歩き方もできます。
道は、木の根が出ている所や石段の上り下りが多く、終盤には急な岩場の坂を下る区間もあります。源氏山公園には水洗トイレが2か所とあずまやが3か所あり、休憩を組み立てやすいのもこのコースの強み。最初の1本にちょうどいいですよ!
観光協会が、七切通のなかで古道の面影をもっともよく残した国指定史跡と紹介する切通しです。鎌倉と六浦(現在の横浜市金沢区)を結ぶ道で、『吾妻鏡』によると北条泰時の監督のもとで工事が行われ、六浦の塩が鎌倉へ運ばれました。鎌倉市の説明では、道の周囲に平場などの防御施設が残り、深い切通し道が当時の雰囲気をよく伝えています。現在は歩行者だけが通れます。
鎌倉駅東口から京急バスで「十二所神社」へ行き、そこから約700m、10分ほど歩くと入口の目印「三郎の滝」に着きます。横浜市金沢区の案内では、切通しを抜けるハイキングは約40〜50分。抜けた先の「朝比奈」バス停には、鎌倉駅と金沢八景駅を結ぶ京急バスの路線(24系統)も停まるので、帰りはどちらへも出られます。
注意したいのは、駐車場もトイレもないこと。トイレはバスに乗る前に駅で済ませておきましょう。
名越切通は、鎌倉から三浦半島方面へ通じる道です。険しい難所で「難越(なごし)」と呼ばれたのが名前の由来といわれます。逗子市が案内する「名越切通・まんだら堂回廊」は、JR逗子駅東口から岩殿寺、法性寺、大切岸、まんだら堂やぐら群を経て名越切通へ抜け、「亀が岡団地北」バス停がゴール。約5.0km・約1時間30分で、最高地点は約90mです。
見どころは、高さ3〜10m、長さ800m以上も続く崖「大切岸(おおきりぎし)」。長く防衛施設とされてきましたが、平成14年度の発掘で石切り場の跡と分かりました(守りの意味がなかったとは言い切れない、と逗子市は説明しています)。150穴以上が確認されているまんだら堂やぐら群は、中に入れるのが公開日だけ。今年の秋は10月24日〜12月14日の土・日・月曜と祝日、10時〜15時で、見学は無料です。
駐車場・駐輪場はありません。道幅が狭いのですれ違いは譲り合い。やぐら群へは急な山道を登り、市の地図では切通しから小坪側へ下りる出口に急な階段があります。3つのコースを表にまとめました。
| コース | 起点→終点 | 距離・時間の目安 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|---|
| 葛原岡・大仏ハイキングコース | 北鎌倉駅→長谷駅 | 約3km・約1時間30分 | 木の根と石段、終盤の岩場の下り |
| 朝夷奈切通 | 十二所神社バス停→朝比奈バス停 | 切通しを抜けるのに約40〜50分 | 駐車場・トイレなし |
| 名越切通・まんだら堂回廊 | JR逗子駅東口→亀が岡団地北バス停 | 約5.0km・約1時間30分 | やぐら群は公開日のみ、急な山道 |
切通しの道は、土と岩と木の根でできた自然の山道です。駅前の観光道路と同じ感覚で入ると、足元で苦労します。準備で差がつくのは靴と、前日の情報確認の2つ。
観光協会は、鎌倉のハイキングコースは滑りやすい所や急な上り下りがあるとして、歩きやすい服装と登山に適した靴を用意するよう呼びかけています。とくに雨のあとはぬかるんで滑りやすくなるとのこと。逗子市も名越切通について、雨のあとは所々がぬかるむと注意しています。
濡れた岩や木の根は、靴底の溝が浅い靴だと簡単に滑ります。雨の翌日に予定していたなら、日を1日ずらすのが賢明です。ずらせないときは時間に余裕を持って出かけ、岩場の下りや木の根の上は一歩ずつゆっくり。ぬかるみがひどければ、無理に進まず引き返すのも立派な判断です。急いで取り返そうとしないことが、いちばんの転倒対策ですよ!
山道の通行止めは、ある日突然出ます。鎌倉市の天園ハイキングコースは2026年3月、倒木で一部の区間が一時通行止めになり、安全を確かめたうえで約1週間後に解除されました。逗子市でも9月30日、披露山公園のハイキングコース内で崖くずれがあり、通行禁止になっています(どちらも今回の3コースとは別の道です)。
確かめる先は、鎌倉市と鎌倉市観光協会のサイト、逗子市の「自然の回廊」のページ、朝夷奈切通なら横浜市金沢区の案内も。大雨や台風のあとは、とくに念入りに見てください。まんだら堂やぐら群の公開も、大雨の予報などのときは予告なく中止になることがあります。
逗子市によると、スズメバチの活動期は4月から11月で、とくに秋がピーク。攻撃性も高まる時期です。観光協会も刺激しないよう呼びかけています。羽音が近づいたら手で払わず、静かにその場を離れましょう。
もうひとつは日の短さ。国立天文台の暦では、横浜の日の入りは11月1日が16時47分、11月30日が16時29分です。午前中に歩き始め、15時ごろには山道を出る計画にしておけば慌てません。切通しは住宅地のすぐそばにあるものも多く、鎌倉市は近隣の迷惑にならないよう配慮を求めています。観光協会は、ハイキングコースに自転車やバイクで乗り入れないこと、火気を使わないこと、ごみを持ち帰ることを求めています。
切通しは、鎌倉が山に守られた都だったことを、自分の足で確かめられる場所です。最初の1本は、トイレと休憩場所のある源氏山公園を通る葛原岡・大仏ハイキングコース。慣れたら古道の面影がいちばん残る朝夷奈切通、やぐら群の公開日に合わせて名越切通、と広げていくのが無理のない順番です。
3つに共通する注意は、雨のあとの足元と、突然出る通行止め。前日に公式の案内を確かめ、滑りにくい靴を履き、午前中に歩き始める。この3つさえ押さえておけば、半日の古道歩きは秋の鎌倉のいちばんの楽しみになりますよ!
観光協会は、登山に適した靴を用意するよう案内しています。木の根や石段、岩場の下りがあり、雨のあとはぬかるみます。少なくとも靴底の溝がしっかりした滑りにくい靴を選び、雨のあとなら軽登山靴が安心です。
通行止めでなければ歩けますが、ぬかるんで特に滑りやすくなると案内されています。できれば1日ずらすのがおすすめです。歩くなら時間に余裕を持ち、出発前に通行止めの情報も確かめてください。ぬかるみがひどい所では、無理に進まず引き返す判断も大切です。
葛原岡・大仏ハイキングコースは、途中の源氏山公園に水洗トイレが2か所あります。朝夷奈切通にはトイレがないと横浜市金沢区が案内しています。どのコースも、歩き始める前に駅で済ませておくのが確実です。
中に入れるのは、逗子市が決める公開日だけです。2026年の秋は10月24日から12月14日までの土・日・月曜と祝日、10時から15時まで。大雨の予報などのときは予告なく中止になることがあるので、出かける前に逗子市のページを確かめてください。
関連タグ:
この記事に関連するキーワード
その他のカテゴリ